サービスの質向上に寄与しお客様から評価される企業に
【葬儀DX対談】髙橋宜己 (株)セレモニー・サービス 代表取締役×白石和也 LDT (株)代表取締役CEO
※この記事は月刊フューネラルビジネス2024年11月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
今回は、LDT・白石社長が、広島県世羅町を本拠とする(株)セレモニー・サービスの髙橋宜己社長と対談。
堅調な売上げ推移をみせている理由をはじめ、「スマート葬儀」導入の狙い、サイトからの流入強化といったITを積極的に活用する背景などについて伺った。
Webからの流入をふやすべく自社ホームページを強化
白石 御社の創業から現在までを伺えますか。
髙橋 当社の法人化は2008年ですが、そのルーツは1980年に私の曾祖父が創業した世羅葬祭です。
曾祖父の後は何人かの親族が代表を務めましたが、後継者がおらず、会社を牽引していた前代表に事業承継したという流れです。
私が生まれる前に曾祖父は他界していましたが、曾祖母が事業を継承し、いつも私に口癖のように苦労話をしてくれました。
葬祭業が身近な存在で小学生の頃からいつか自分もやりたいと思っていました。前代表もそのことは知っていて、ずいぶん目をかけてもらいましたね。
私が入社したのは約10年前で、20年に役員、21年9月には前代表が体調を崩したことを機に自ら志願して代表に就任しました。
白石 代表就任から丸3年が経過しましたが、会社の状況はいかがですか。
髙橋 施行件数は年間120件程度と引き継いだときからあまり変わっていません。
ただ、受注経路を分析すると、新規のお客様が大幅にふえていますし、単価を上げたことにより売上げが確実にアップしています。
前代表は安価路線だったのですが、長年培ってきた当社の技術力やサービスを自信をもって提供し、目配り・気配りやお客様に寄り添い、その対価として単価を上げるという路線に変えました。
社内の反発は大きかったのですが、コロナ禍や物価上昇が進んでいる社会的背景はかえって値上げのチャンスと判断し、値上げ反発を押し切りました。
白石 お客様の流入経路はどこからが多いのでしょう。
髙橋 以前は戸別訪問により初回1万円の会員制度を案内して会員を獲得していましたが、地縁的なつきあいで会員になる人も多く、これが施行につながるかというと心許ないところです。
現在は当社で施行されたご葬家からの紹介、病院や施設からの紹介が多いですね。
今後はWebからの流入を強化しようと、IT導入補助金を活用し自社のホームページ制作を御社にお願いしました。
白石 弊社でホームページ制作をお手伝いさせていただきましたが、ご意見などお伺いできますか。
髙橋 いまや誰しもが、はじめて行く飲食店は事前にネット検索して評価や雰囲気を調べますよね。
葬祭業界でも葬儀社を比較・検討できるポータルサイトが出てきていますが、ポータルサイトで安価な葬儀社を選んでもいろいろ積み増しされて請求金額が大きくなり、お客様は何を信用したらよいのかわからないということが実際に起きています。
そのため、お客様が検索されたときに自社ページが出てくること、そのページが魅力的であることが重要です。
今後は自社ページがなければ、それだけでお客様の選択肢から外れてしまいます。
私は斬新なものをつくりたいという希望があり、閲覧者があまり「死」を連想しない、葬儀社っぽくないホームページを目指しました。
トップページに四季の画像をあしらうなど、とても柔らかい感じに仕上げていただき、たいへん気に入っています。
今後はスマート葬儀と連携させる、EC(電子商取引)ページの連携に期待しています。
求めていた機能がすべて揃い一元的に連携・管理するスマート葬儀を導入
白石 御社の主要商圏は広島県の県央や県北とされていますが、エリア戦略についてお話しいただけますか。
髙橋 エリア拡大は自社の力だけではできないため、さまざまな企業との連携が必要です。
いまは某会社さんとの提携を進めており、3~5年以内に件数を倍増する計画です。
会社組織を整え、件数がふえたら会館も出店していきたいですね。
M&Aも考えたことがありますが、葬祭業界でのM&Aの動向はいかかでしょうか。
白石 M&Aについては、主要都市では中規模の葬儀社がM&Aや連合するなど活況を呈しています。
一方、大手がカバーできていないエリアでは、地域に根づいた葬儀社がマーケットを牽引していく形になるでしょう。
大手があまり進出しない地方で、品質・サービスを高めて適正な単価を確保し、たとえば「葬儀」「世羅」で検索したときに上位に挙がるWeb対策もしっかりやっておられる御社はモデルケースになるのではないかと思います。
髙橋 私たちは、“地方に仕事をつくる”という動きに注目しています。
地方でも空き家がふえていますが、空き家を買い取り葬祭会館にリノベーションして活用できるのではないかと考えています。
「近所の目を気にして自宅で葬儀はしたくない」「近隣に葬祭会館がないため、少し離れた場所で施行するしかない」など、そのようなニーズをつかむには、会館っぽくないアットホームな建物が好まれるのではないでしょうか。
また、会館を新築で建設すると投資回収までしばらく時間がかかりますが、空き家であればイニシャルコストを低く抑えられます。
あるいは、高齢化で維持・管理が負担になっている地域の集会所を引き取って会館にすることができれば、地域貢献にもつながります。
白石 なるほど。いい目の付けどころで大きな可能性を感じます。
さて、御社にはスマート葬儀を導入いただいておりますが、その意図やご期待をお聞かせください。
髙橋 以前からクラウドを使ったシステムが必要だと感じていました。
当社は世羅町だけではなく広島県内をカバーしているため、たとえば広島市内に打合せに行った担当者が戻るまでの約2~3時間の間、本社では担当者以外誰もわからないという時間ロスや、施行担当と事務担当との間の伝言ゲームで見積書などにミスが発生することがよくありました。
それらを解決できるシステムを探していましたが、なかなか見つからず、ようやく巡り合えたのがスマート葬儀だったのです。
スマート葬儀には、求めていたものがすべて揃っていました。
訃報案内から供花・供物の注文、香典決済、打合せ先での見積書作成、顧客管理などの機能を完備し、それらがクラウドで一元管理され、かつワンストップで連携している。
実際に導入してみると、喪主との打合せの場で見積書をリアルタイムに作成できるので、時間のロスや伝言ゲームがなくなり、情報共有・手配もスムーズになりました。
そのデータはクラウドで管理されますから請求書の作成も簡単で、ミスがなくなって業務効率も高まり、お客様に寄り添える時間を長く取れるようになりました。
利用料金がリーズナブルなのも魅力ですね。
以前導入を検討していたシステムよりも月々の負担が軽くなったうえに追加料金もなく、葬儀社の業務についてしっかり把握されているシステムだと思うので重宝しています。
白石 訃報案内や供花・供物の注文、香典の決済などの機能と顧客管理が、クラウドで一元的に結びついたシステムが葬祭業界に必要だと考えたのが開発の原点ですから、そうお褒めいただけるとありがたいです。
最後になりますが、御社の今後の展望についてお聞かせください。
髙橋 第一に、お客様に安心だと思っていただける葬儀社を目指します。
スマート葬儀を導入したことで、お客様の目の前で見積書を見せられることはその大きな一歩ですね。
また、働く側もわくわくしながら働いてほしいと思っています。
スマート葬儀の導入には、スタッフが「この仕事をしてよかった」「このご葬家を担当してよかった」と思え、ゆとりを生むための意義もあります。
ゆとりが生まれることで目配り・気配りがいままで以上にできるようになり、そのことでサービスの品質が高まります。
当社に依頼してよかったと思っていただける会社を目指し、お客様に寄り添い、お客様が求めているさまざまな思いをくみ取ることができ、さらに自分自身も成長し、楽しく働いてもらえる会社組織にしたいですね。
白石 本日はありがとうございました。
参考URL:
(株)セレモニー・サービス
https://ceremonyhall-kazenosato.com/
◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。
2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。