早期にワンストップの相続手続き確立 ライフエンディングへの領域拡大へ
【葬儀DX対談】山田愼一 グリーン司法書士法人・グリーン行政書士法人 代表×白石和也LDT (株)代表取締役CEO
※この記事は月刊フューネラルビジネス2025年2月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
今回は、葬儀社のアフター売上げを伸ばす取組みを続けているLDT(株)の白石和也社長が、早くから相続手続き等のワンストップサービスを展開してきたグリーン司法書士法人・行政書士法人代表の山田愼一氏と対談。
葬儀後に発生する相続手続きへの取組み、受注管理部分のシステム化の狙いや今後の展望などを伺った。
Webマーケティングで相続手続きを一貫受注 葬儀社とのアフター連携に本腰
白石 創業から現在までを簡単にご説明いただけますか。
山田 司法書士の資格を取得したのが31歳のときで、2年後の2007年に大阪で事務所を立ち上げました。
当初は「司法書士という職人」の意識が強く、1人でやっていくつもりでしたが、半年程度で自分では手に余るくらいの仕事が集まりまして。
お客様との面談中に郵便物が3回届き、電話は6回くらい架かってきてという状態で、しまいにはそのお客様に「いい加減にしてくれませんか」と怒られ、それを機に社員を採用することにしました。
それでも事務所を拡大する気はありませんでした。
5、6人のスタッフで順調に実績を積み重ねていたからです。
それが社員の結婚披露宴に出席したとき、ご両親に「将来を頼みますよ」と言われまして。
司法書士という職人であるけれども、経営者でもあるのだと気づかされました。
そこで、
「経営者なら、働いている人の人生に貢献していくことが大事」
「そのためには、やはり事業を安定的に成長させていくことが必要」
と考えるようになりました。
これは当法人のミッション
「人生を、社会を、よりよく。」
そしてビジョン
「100年後も成長しつづけるありがとうカンパニー。」
につながっています。
現在、スタッフは約200人で東京・大阪・名古屋に事務所があり、近々には札幌にも開設を予定しています。
白石 貴社はWebマーケティングと業務のデジタル化に強い印象があるのですが。
山田 私どもの業界もこの17年間で大きく変わりました。
ネットの普及で何でもGoogleで調べられるようになったり、AIが出てきたり、そこは業界内ではアジャストしているほうだと思います。
DXには人もお金も投入・投資していかないと生き残っていけないと思っているので、常に情報のキャッチアップを心がけています。
当法人では自社で集客することを大事にしており、宣伝広告費にもお金をかけています。
ただ、広告は真似されやすいという側面があるため、長い目で見たとき、広告宣伝以外の部分で強みを出していかないと利益率が厳しくなるだろうと予測し、SEO対策などにはかなり早い段階から着手していました。
いま、その部分がようやく成果に結びついていると思います。
白石 相続手続きの受注が大きな強みとのことですが、相続受注に注力されている背景や経緯を教えていただけますか。
山田 背景としていちばん大きいのは、相続というマーケットはしばらく伸び続けていくという予測からですね。
経緯としては、私が事務所を開設した17年前は相続手続きといっても相続税申告は税理士、登記は司法書士、揉めたら弁護士と士業は専門のこと以外はやらないという状況でした。
私のような司法書士が、依頼された不動産の相続登記を進めている最中に相続税について相談されても「それは税理士さんに聞いてください」となり、税理士も登記などの手続きについて相談されても困ると。
これをうまくコーディネートしてワンストップサービスとしてしっかり担っていけば、お客様の利便性も増し、自分たちのビジネスにもなると思ったのが創業して数年経った頃でした。
既存の業務は競争も激化しており、シュリンクしていく。
新たなジャンルの仕事を開拓するのは業界への貢献でもあると思います。
しかし、最初は苦労しました。
スタッフに「こういうのをやろうと思う」と提案しても、「司法書士がやることではないです」と否定的でした。
実際にマーケティングを開始して4、5年は赤字で、ノウハウもマニュアルもなかったので、最初は1つひとつの仕事をスタッフとともに調べ、考えながら四苦八苦しました。
いまでは教育の仕方やマニュアルを整備し、DXも進めているので当初の倍以上の速さで案件に対応できるようになりました。
白石 Webマーケティングからはじめ、しだいに葬儀アフターの相続受注に変わっていったという感じですか。
山田 現在でもWebの比率が高いですね。
1社目の葬儀社さんとの提携は相続手続きの受注を開始した頃です。
ただ、1社目はまだこちらにノウハウがない状態であり、その葬儀社もアフター部門がない状況でしたので、お互いに本腰になりきれていなかったと思っています。
そうした失敗を経験し、いまでは葬儀アフターをしっかりやっている葬儀社さんと提携、ある程度安定的に紹介いただけるという関係になっています。
このアライアンスについては、より葬儀社さんのお役に立てるように強化していきたいと思っています。
白石 相続手続きの受注管理部分をシステム化されようとしていると伺っていますが、その背景や狙いをお聞きできますか。
山田 これまでも既存のクラウドサービスでデジタル化を進めてきましたが、自社向けにカスタマイズすることがむずかしく、予算と時間をしっかり確保してシステム開発を進めることにしました。
狙いとしては、CRMの機能はもちろん、私たちの仕事でいちばん時間がかかる書類作成を自動化できないかという発想が原点です。
実現すれば、書類作成にかかる時間は10分の1程度に短縮できるはずです。
サービス向上かつコストダウンするので価格もリーズナブルに提供でき、収益性も上がることになります。
チャレンジとしての意味も大きいです。
私たちの主な仕事は手続き業務ですが、長期的に見るとテクノロジーの発展で手続きが簡素化され業務が縮小していくことが予測されます。
システム開発にはリスクもありますが、いまのうちに失敗してノウハウを貯めていければ、逆に私たちの側がそういった業務に革新をもたらすものを開発できるのではないかと考えています。
葬儀社さんとの提携では、アフターの情報共有が強化されます。
葬儀後、私たち士業のほうがご遺族との接点がふえます。
長くおつきあいしたお客様と情報共有することで、葬儀社さんに次の接点を提供できると考えています。
情報共有ができれば、管理コストを大幅に削減し、さらにヒューマンエラーによる抜けや漏れなどに対するクレームも防げ、顧客満足につながる。
担当者の負担を軽減し、案件がふえることで収益性も向上するでしょう。
白石 そのシステムとLDTのスマート葬儀との連携も視野に入ってくると思うのですが、連携することで葬儀社と顧客にどのような利便性や成果が考えられるでしょう。
山田 当法人では、CTIの導入やシステム連携で一度接点のあったお客様が2年後に電話してきてもすぐわかる仕組みを確立しています。
これは、私たちがWebマーケティングを主にしていて、お客様との接点をもってから1、2年経って受注になることがよくあるためです。
そうした仕組みとスマート葬儀が連携すれば、葬儀社さんは手間をかけずに緻密な顧客管理が可能になるでしょう。
白石 スマート葬儀では、顧客データが葬儀以外のさまざまな受注に結びつくことを実現しました。
また、葬祭業界や周辺事業者のニーズを受けてCTIとの連携による電話のステータス管理、オンラインFAXとの連携によるFAXでの発注自動化機能なども実装しました。
しかし開発時に掲げていた周辺事業者への発注管理の完全なデジタル化はまだ実現できていません。
グリーン司法書士法人様との連携であれば、私たちがやりたかったことができると考えています。
ぜひ一緒に実現できればと思います。
白石 最後になりますが、今後の展望などを教えてください。
山田 士業の業務は税理士法人・弁護士法人などへも広げていきます。
5年後ぐらいまでには、日本全国どこでもサービス提供できる体制にしていく計画です。
また、ライフエンディングという広い領域で事業を拡大していきたいと考えています。
高齢者の方だけではなく、相続手続き後のご遺族なども含め、終活全般で困っている方や社会課題も多いでしょう。
その部分をサポートしていくビジネスをいくつか立ち上げようと思っています。
私たちがお手伝いをして、少しでも悩みや苦しみ、面倒なことを減らしていけたら幸いです。
白石 本日はありがとうございました。
参考URL:
グリーン司法書士法人・グリーン行政書士法人
◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。