人的負担の低減と火葬予約のミス解消!カスタマイズ仕様で業務効率化に寄与

【葬儀DX対談】川上聡子 飛騨市役所 市民福祉部市民保健課×白石和也LDT (株)代表取締役CEO

※この記事は月刊フューネラルビジネス2025年3月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。

今回は、LDTの白石和也社長が、同システムを24年11月より導入している岐阜県飛騨市の市民福祉部市民保健課の川上聡子氏と対談。

導入理由や導入後の状況・効果などについて伺った。

火葬場予約は大きな業務負担 業務効率化が長年の課題

白石 はじめに、飛騨市の概要と火葬場の状況についてお伺いできますか。

川上 飛騨市は岐阜県の最北端に位置し、平成の大合併で2004年2月に吉城郡古川町・神岡町・河合村・宮川村の2町2村が合併して生まれた市です。

面積は792.53㎢、合併当時は約3万人だった人口が毎年400~500人減少していて、今年1月1日現在では2万1,677人です。

死亡届は年間400件ほど受理されており、火葬場は旧・神岡町にある松ヶ丘公園斎場と旧・古川町にある光明苑の2か所、いずれも炉数は2基となっています。

火葬場を利用する葬儀社は隣接する高山市の葬儀社も含めて6社で、火葬件数は年間約500件です。

白石 その年間約500件の予約対応を、すべて市役所で担当しているということですね。

川上 そうです。

「スマート火葬予約」の導入前は、まず葬儀社さんが市役所に架電して火葬場の空き時間を確認、その後ご遺族と相談して火葬時間を決め、また架電して火葬時間を押さえる。

その後、私たちが予約情報をFAXで火葬技師や指定管理者に流すというプロセスで、非常に時間と手間がかかっていました。

白石 そのようなやり方で火葬予約業務が年間500件。

たいへんな労力ですね。

川上 はい。

私たち市民保健課は、市民の方々の生活に関わること、たとえば戸籍や住民基本台帳、国民健康保険、福祉医療、後期高齢者医療などを担当しています。

火葬場予約はいつ発生するかわからず、さらに緊急性が高い業務ですから、火葬予約に関する電話が架かってくるたびに取り掛かっていた業務を中断し、予約の業務が終わってから再開するという具合に。業務効率がよいとはいえませんでした。

職員配置の観点からも、夜間や休日は宿直者が対応しなければなりませんし、宿直者との引き継ぎやFAXへの記入のときに起こるヒューマンエラーなどのリスクも高かったと思います。

そこで、このデジタル化が進む時代、火葬予約もオンラインでできないかと市庁内で協議し、火葬予約システムの導入・開発について一般競争入札を実施し、LDTさんのスマート火葬予約を導入しました。

白石 飛騨市さんのケースは、スマート火葬予約を導入していただいているほかの行政や指定管理者さんの困りごととの共通点を感じます。

火葬場従事者の方からよく耳にするのが、交代勤務ゆえに発生するダブルブッキングです。

夜中に守衛さんが電話を受けて、その守衛さんが書き間違えたとか、転記するときのミスでダブルブッキングになる。

おっしゃるとおり、デジタル化することでこのあたりはクリアできると思っています。

「スマート火葬予約」の導入により職員・葬儀社とも大幅に負担が軽減

白石 実際にスマート火葬予約を導入していただいて、それらの困りごとは解消されましたか。

川上 はい。

24年7月に一般競争入札を公告し、8月にLDTさんが落札して契約、それからシステムを開発されて10月末に完成、11月からしばらくはシステムの入力と従来の電話・FAXでの予約を並行して行なっていました。

スマート火葬予約に一本化したのは今年1月からと、まだ日も浅いのですが、葬儀社さんも職員も負担が大幅に減りました。

さまざまな手続きや問合せなどに対する窓口対応をしながら、葬儀社さんから電話が架かってきたり、火葬技師さんにFAXしたりと業務が錯綜するなかでこなしていたのですが、導入によりそのようなことは一切なくなり、本当に事務改善されたと実感しています。

葬儀社さんからも、「市役所でいちいち確認しなくていい、自分たちで予約が完結できるから楽だ」とのお言葉をいただいております。

白石 ありがとうございます。

たいへん喜んでいただき、私たちもつくった甲斐がありました。

短期間で予約システムを構築 改善要望にも即対応

白石 予約システムの導入にあたり、葬儀社さんの反応はいかがでしたか。

川上 オンラインでの予約に変更すると聞いて、葬儀社さん、特に年配の方は「操作できるかな」と不安もあったようですが、シンプルな操作性のシステムをつくっていただきました。

また、導入前には、LDTさんから葬儀社さんに向けてシステムに関する説明会を開催していただきましたが、丁寧な教え方で不安は解消されました。

いまではすっかり慣れて、心配されていた方も「楽になったね」とおっしゃっています。

白石 実際に利用された葬儀社さんから、どのような感想や意見がありましたか。

川上 オンライン予約に対しては好意的な意見が多く、導入して本当によかったと実感しています。

ただ、私たちはパソコンで作業するので気づきませんでしたが、「スマホで見やすくなるといい」という葬儀社さんからの改善点も入ってきています。

白石 なるほど。

スマホで見やすくなればというところですね。

実際にスマホで予約される葬儀社さんがいらっしゃるということですね。

川上 はい。

飛騨市は市域が広いので、葬儀社さんはスマホを持ち歩いてご遺族の自宅に伺い、その場で予約をされるケースが多いのだと思います。

白石 貴重なご意見ありがとうございます。

今後の開発に活かしたいと思います。

今回、飛騨市向けに開発させていただきましたが、いかがでしょうか。

川上 8月から10月という約3か月の短期間でよくここまで使いやすく、見やすいシステムを構築していただいたと思います。

飛騨市独自で設けた火葬場の規定など、非常に細かい取り決めがあったのですが、それもすべてクリアされていました。

導入当初の並行運用のときも、「ああしてほしい」「こうしてほしい」と多くの要望を出してしまいましたが、こちらのすべての要望に対してとても丁寧に解消してくださって、飛騨市仕様にしていただきました。

本当に感謝です。

白石 ありがとうございます。

システムをつくったエンジニアにも伝えておきます。

次の展開として、今後飛騨市の火葬場や葬送関連で進めている施策などがありましたら、お聞かせいただけますか。

川上 飛騨市では19年6月から市役所内に「おくやみワンストップ窓口」を開設しています。

これは市民の方が亡くなった後、市役所内で行なうさまざまな手続きに関する専用窓口で、関係課より職員が出向いてご遺族に説明し、その場でほとんどの手続きを済ませることができるサービスです。

市民保健課保険年金係に専用カウンターが設置されています。

私は直接の担当ではないため、詳細は申し上げられませんが、こちらの窓口でもデジタル化を進めています。

白石 そうですか、それは素晴らしいですね。

最後になりますが、私どもLDTに対してのご意見・ご要望、今後期待することなどがありましたら、ぜひお聞かせください。

川上 期待というかお願いになりますが、「スマート火葬予約」が今年1月に本稼動して1週間くらい経ったばかりですが、今後さまざまな想定外のことが出てくると思われますので、そのようなときに相談に乗ってもらえればありがたく存じます。

白石 もちろんです。

そのときは迅速にできる限りの対応をさせていただきます。

本日はありがとうございました。

参考URL:

飛騨市役所

https://www.city.hida.gifu.jp/

◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。