「野立て看板」ブランディングの新たな可能性
【葬儀DX対談】高橋由樹 (株)ブランディングボード 取締役CMO×加藤敦宣 (株)ブランディングボード 常務執行役員COO×白石和也LDT (株)代表取締役CEO
※この記事は月刊フューネラルビジネス2025年5月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
今回は、「アナログな」野立て看板の集客ポテンシャルに注目するコンサルティング会社 (株)ブランディングボード(本社 東京都町田市、社長 田中瑠璃氏)取締役CMOの高橋由樹氏、常務執行役員COOの加藤敦宣氏と白石社長が鼎談。
ブランディングボードが手がける野立て看板の設置戦略や葬祭業 界での実績、その効果などを伺った。
Web広告から野立て看板に切り替え驚異的な年商を実現した歯科医院
白石 まずは貴社の概要をお伺いできますか。
高橋 当社は、屋外広告に特化して集客・ブランディングを実現する会社です。
看板のノウハウを含めた事業譲渡を受け2024年にスタートしました。
事業領域は、第1に店舗看板ではなく野立て看板にフォーカスした看板事業。
ロードサイドなどに立てる野立て看板の立地開発・デザイン・企画から設置・管理までを一貫して対応しています。
第2に、集客アップコンサルティング事業。
飲食店から士業まで、店舗・事務所をもつお客様であれば、すべて集客アップの対象としています。
野立て看板はあまり研究が進んでいない領域ですが、屋外広告の可能性を調べる研究開発部門を設けています。
得られた知見を、論文にしたり発表したりというのが、研究開発セミナー事業ということになります。
白石 貴社が手がけられた「きぬた歯科」さんの野立て看板は有名です。
どのような方策をとり、どのように検証し、どれくらいの効果を上げられたのでしょうか。
高橋 きぬた歯科さんはインプラント治療を専門にしている歯科医院で、現在の年商は18億円。
厚労省調べで歯科医院の平均年商は5,000万円弱ですから、これは驚異的な数字です。
その達成に当社の野立て看板が貢献したという事例です。
相談を受けた頃、一部の歯科医院が稚拙なインプラント治療をしていたことがテレビで報道されてインプラントバッシングが発生、きぬた歯科さんも予約のキャンセルが相次ぐなど大きなダメージを受けていました。
そうした最中に、広告の効果検証を行ないました。
当時はWeb広告に年間約1,200万円を費やし、野立て看板は3基のみで年間コストは約75万円。
ところが、患者にアンケートをとったところ、Web広告と野立て看板の来院数を比較すると、数がほぼ変わりませんでした。
きぬた歯科さんの素晴らしいところは、検証結果を見て広告をすべて野立て看板に差し替えたことでしょう。
東京都内を中心に関東全域で340基の野立て看板を設置、業績はV字回復し、年商は18億円にまで到達しました。
院長からは「野立て看板のおかげでここまで伸ばすことができ、人生が変わった」とまで仰っていただいています。
野立て看板ならではの強み
エリア内複数設置で効果絶大
白石 葬儀社さんでの実績を伺えますか。
高橋 新規会館をオープンするときに、エリア内で16基の野立て看板を設置、施行件数が想定の3倍に伸びたという事例があります。
看板のデザインは「家族葬」「ブランド名」「会館名」、そして価格の部分がポイントでしたので「〇万円から」という表記をメインにした、シンプルで見やすいものにしました。
地域住民が1日のうちに何回も通るような、看板が地域社会に溶け込む場所を丁寧に探して選定した場所に16基を設置しました。
複数箇所に設置することで、オープン前から高認知度という効果が生まれたわけです。
白石 新規の葬祭会館ですと、「エリアに何基の看板があると効果的」というような目安はあるのでしょうか。
高橋 顧客に店舗・企業を記憶してもらうために、エリア内に必要な野立て看板の数を調べようと、シミュレーションを行なったことがあります。
変化が起きるのは野立て看板3基からでした。
3基あれば、チラシなどを提示されたときに「見たことがある」と記憶の再認をする人が出ます。
これは弱い記憶ですから、動画広告・ポスティングなどメディアミックスが前提になってきますね。
これが9基以上になると、強い記憶として再認してもらえるようになります。
チラシ・Web広告がなくても直接覚えてもらえるわけです。
白石 9基だと、コストはどれくらいかかるのでしょう。
加藤 ロードサイドに設置する野立て看板の場合、1基当たり月3万~4万円くらいの相場感です。
もちろん、都心の幹線道路の交差点などに掲示するビルボード的なものになると数十万円するものもありますが、都心部などでなければ、9基くらい設置すると単純計算で30万円台のランニングコストになります。
理論と根拠に基づく新たな「野立て看板」像を創出
白石 葬祭会館ではなく、当社が運営するポータルサイト「やさしいお葬式」のようなWebメディアの場合、どのくらい看板を出すのが効果的でしょうか。
加藤 イメージでいいますと、主要幹線道路に1基ずつ、「この場所に必要」という場所に出していく感じでしょう。
場合によってはロードサイドに10基設置したほうが、ビルに設置する高額な大型看板1基よりも効果は高いと思います。
高橋 広告はWebだけで終わる、看板だけで終わるというものではありません。
Web検索したときに「この名前、知っている」となるように、「聞いたことがある/知っている」集団をつくるのが野立て看板の役割だと思います。
白石 理論と根拠にもとづいて野立て看板を出しているのですね。
競合他社との違い・強みを聞かせてください。
高橋 白石社長が仰ったとおり、理論と根拠にもとづいているというところでしょう。
看板業界は理論も根拠もない、悪い意味での職人的な世界です。
デザイン1つとっても、グラフィックデザインをしていた人が、そのまま看板のデザインをする。
仕上がりはきれいでお洒落でも、それは画面上でのことで、設置された看板としてどう見えるのかが考えられていない、ということがよくあります。
当社には蓄積したノウハウがあるので、効果を実感していただける広告を提供できていると思います。
白石 デザインなども含めコンサルティングできるということですね。
ところで、都市部と地方では、野立て看板を出すときの戦略やその効果は変わりますか。
高橋 初期の認知を形成していく過程は、場所や業種・業態にかかわらず避けては通れません。
その意味では、都市部と地方で戦略に違いはない。
ただし、都市部よりも地方のほうが複数箇所に設置でき、看板だけが目につくような環境がたくさんあるので、より設置効果が発揮しやすいということはいえるかもしれません。
白石 最後になりますが、この鼎談で興味をもった葬儀社さんもおられると思います。
全国どこの葬儀社さんでも、貴社に依頼することは可能なのでしょうか。
加藤 もちろんです。
首都圏・関東圏を中心に展開していますが、セミナー等で知り合った全国のお客様からも引き合いがあります。
たとえ当社の物件がない地方であっても、当社は地主さんとの交渉から立地開発をさせていただいていますから、全国どこでも専属部隊が足を運び、地主さんとの交渉をすべて終えた状態でクライアント様に提示します。
「昔、野立て看板をやっていたけど、パッとしなくてやめた」
という方は、結構いるのではないかと思います。
そうしたお客様にこそ、あらためて提案したい。
当社の社名は、野立て看板のイメージを変えたいと名づけたもの。
野立て看板はもう昔の誘導看板ではなく、社名のとおり、「ブランディング」のための「ボード」なのです。
白石 野立て看板の大きな可能性を感じました。
本日はありがとうございました。
参考URL:
(株)ブランディングボード
◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。