デジタル化推進・人材登用・直葬/家族葬ブランド展開で業績が向上
【葬儀DX対談】冷牟田真二氏㈱真浄葬祭 代表取締役×白石和也LDT㈱ 代表取締役
※この記事は月刊フューネラルビジネス2023年8月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
今回はLDT・白石社長が「スマート葬儀」を導入し、業績を飛躍的に伸ばす㈱真浄葬祭(本社福岡県中間市)の冷牟田真二社長と対談。同社での人材活用や業務効率化、葬祭業界の展望などについて語った。
年間施行件数9件から 現在は1,200件まで飛躍
白石 真浄葬祭の成り立ちや現状をお聞かせください。
冷牟田 弊社は福岡県中間市を拠点に北九州市、直方市、遠賀郡で展開しています。現在は直営施設として葬祭会館が4か所、海外送還事業に伴って設けたメモリーホール1か所、FC展開している家族葬・直葬の心響(こきょう)ブランドの会館が今年7月オープンの3か所を加えて11か所になります。年間施行件数は約1,200件です。
真浄葬祭のルーツは、1991年に父が大手葬儀社を退職して開業しました。当時、私は高校生で、普通に就職活動をして内定もいただいていたのですが、卒業間近に父が突然、「跡を継いで欲しい」と。独立後1~2年で、初年度の施行は年間9件。これから大きくしていこうという父の想いもあり、跡を継ぐ決断をしました。入社後すぐに別の葬儀社に2年間修業に行くことになりました。
白石 その後、戻られて社長と交代されたと。
冷牟田 父は職人肌で保守的、経験豊富で創業者としての権限をもっている。私は経験を積みながら「未来を見据えると葬儀価格は下がる」と、25年前くらいから感じており、方向性でぶつかりあうことが多かったですね。
白石 その先見の明はすごいですね。
冷牟田 統計から少子高齢化が来るのは明らかでしたから。まあ喧嘩してもしょうがないので、父にわからないように内製化の準備をはじめました。「自社でできることはできるだけ自社で」と、生花部をつくり、遺影写真も自社で製作し、と少しずつ積み上げていきました。
従業員のモチベーションを意識した人材登用女性従業員が7割
白石 現在はFC展開をされていますね。
冷牟田 心響ブランドの展開をはじめて、この6月で8年目に入りました。はじめたころ、これから人材の問題が重要になるだろうと新卒採用に舵を切りました。採用活動は、準備して、インターンなどを経て、説明会を行ない、と考えると採用まで1~2年はかかりますね。ブランドを統一することによって会館間で人材が行き来できるようにしようとしたのがFC展開のきっかけです。
白石 同ブランドでドミナント展開して、会館をふやすことで人員効率を上げるというのが目的だったと。
冷牟田 あと、ハウスメーカーのショールームを真似て、ブランドの強みや他社との違いを伝えるツールをつくり、パートさんでも会館の見学対応や見学時の打合せができるような、スタッフの経験値で説明や入会率が変わらないようなシステム化をFC展開と同時に行なったのです。
白石 入口部分での対応の均一化は、事業拡大するうえでの基礎だと思います。当社には週に1、2件のM&A案件が来ます。案件の多くは、債務超過や人材不足、後継者不在という課題を抱えている葬儀社様ですね。人材というと、御社は女性役員・従業員が非常に多いですよね。なぜなのでしょう。
冷牟田 役員6人中2人は私と父で、それ以外は女性です。まあ1人は母ですが。他の3人の役員のなかには元パートさんもいます。修業のときの経験から、私は評価制度とか昇級制度とか、従業員のモチベーションを非常に意識しています。パートさんでも取締役になって舵取りができる人材であれば登用したいと思いますね。
弊社の従業員は平均年齢が20代後半、7割が女性です。7割という比率にこだわりはなく、単純に男性・女性ということをまったく気にせずに採用活動を続けていたらこうなったというのが正直なところです。
また、弊社では納棺するとき以外、担架を下ろしたりするような作業はオペレーション上簡略化してきました。スタッフの負担を減らすためですが、女性が活躍しやすいベースにもなっていると思います。
ブランディングで激戦区を生き残るスマート葬儀導入でデジタル化を進行
白石 北九州市は、高齢化率などのデータから他のエリアと比べて死亡者数の割合が高いエリアかと思います。
冷牟田 そうですね。競合他社が多い激戦区です。そのなかで弊社の強みは、やはりブランディングです。心響をはじめた当初は積極的にメディア露出していたのですが、7月の3会館オープンを機に、価格面では露出を減らして、ブランディングを意識した情報発信に切り替えていこうと思っています。
白石 会館数がふえて認知度が高まれば、ブランディングによる差別化も有効になってくるでしょうね。
社長がおっしゃっていたように、人口統計上で少子高齢化が進み、死亡者数が増えて就労人口は減ります。それに対応するためのデジタル化の状況はどうですか。
冷牟田 人材が枯渇まではいかないにしても、若いスタッフが多く結婚や出産などで多少の人手の変動はあるわけですね。そのなかで、普段のオペレーション自体を簡略化したいという考えは前からありました。また自社会館もふえており、管理・分析もしたい、マーケティングも、と思いはあってもそれを実現するツールがなくて。
弊社スタッフが昨年のフューネラルビジネスフェアでLDTさんとつながったのがデジタル化の入口でした。それまで地元のソフトウェア開発会社と進めていましたが、痒い所に手が届きませんでした。しかし、LDTさんとの打合せでは「いまはできませんけど改善していきます」などポジティブなリアクションがあって、それが「スマート葬儀」導入のきっかけですね。弊社での要望に合わせてカスタマイズしていただき、業務効率化に非常に役立っています。
白石 社長のおっしゃる「オペレーション自体を簡略化したい」という話が非常に重要だと思います。「スマート葬儀」をうまく活用している会社様は、まずは既存のオペレーションを「やるべきこと」「やらないでいいこと」にしっかり仕分けして、「やらないでいいこと」を捨て、「やるべきこと」も「自社でやらなければいけないこと」「外注してもいいこと」「自動化してもいいこと」の3つに切り分けて「自動化してもいいこと」をシステムに置き換えているんですね。
アフターフォローのシステムも充実今後の課題は葬儀を支える「人」
白石 葬儀のアフター、遺品整理や相続、永代供養、不動産の売却などの状況はいかがでしょうか。
冷牟田 葬儀のアフターについては、昔から内製化を進めてきました。返礼品については社内にギフト部がありますし、不動産については子会社に不動産会社があります。法事については初めて会館を建てたときから積極的に受け続けてきました。システムも充実し、すべてのオペレーションをスタッフが理解して動いていますね。最近だと海洋散骨もあったので、去年船舶を買いました。
白石 それはすごいですね。受注率はどうですか。
冷牟田 感覚として半分以上は何らかの相談を受けます。制作部が企画・製作し、法令変更などの度に更新している葬儀後のための冊子があります。それをお客様に見せ、葬儀後1時間ほどでいろいろご説明をさせていただいています。新人スタッフはこの「後説」ができるようになってはじめて葬儀担当者になれるというシステムです。
白石 なるほど。やはり伸びている会社様は、受注やアフターサポートの仕組みが平準化されていますね。
最後に、今後の課題や展望などをお願いします。
冷牟田 弊社だけではなく業界全体として、やはり人材不足の問題が大きいと思います。とにかく私たちの仕事は「人」なんでね。年間約1,200件施行していますが、人がいないとお断りしないといけなくなります。
人材確保のため、安心して活躍できる場づくりをしていかないとと考え、その一環として今年は社員食堂の開設に取り組んでいます。経験豊富な料理人を呼んで、本格的なものを来年の冬にはオープンさせます。
採用面では、最初に私が必ず面接し、想いや理想をまずぶつけてみることを続けています。他社とは違うアプローチで、弊社を選んでもらえる確率は少し高くなるのではないでしょうか。葬祭業界にとって、これからは人材の確保が最重要課題の1つになると考えています。
白石 本日はありがとうございました。
冷牟田 ありがとうございました。
参考URL:
真浄葬祭
https://shinjyosousai.com/newsite/
◆この記事の監修者プロフィール
LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。