創業当初から「スマート葬儀」を導入1年で地域シェアトップに

【葬儀DX対談】秋葉恵光氏㈱しおかぜ 代表取締役×白石和也LDT㈱ 代表取締役

※この記事は月刊フューネラルビジネス2023年11月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。

2021年8月にオープンした「しおかぜホール」

今回はLDT・白石社長が、「スマート葬儀」を2021年の創業当初から導入する㈱しおかぜ(本社千葉県勝浦市)の秋葉恵光社長と対談。創業1年でトップシェアとなった同社が、急速に施行件数を増加させた理由やシステム活用の仕方などについて語った。

独自風習の強いエリアで地域密着営業により件数トップを実現

白石 秋葉社長は千葉県全域で展開する大手事業者に長年勤め、2021年に独立されたと伺っています。勝浦市で創業された経緯を教えてください。


秋葉 前の会社には26年ほどおりました。その間、千葉県南部に24店舗あった全支店を回ったのは私だけだったのです。その後、大手さん同士でM&Aがあり、それをみて思うところがあったり、私が理想とする葬儀ができなくなるのではないかと、地元・勝浦市で創業しようと決め、21年8月に家族葬会館「しおかぜホール」をオープンしました。
 県内でも勝浦は独自の風習が強い地域で、たとえば、お通夜は式場で行ない、葬儀は寺院でとり行なったり、ご近所さんと葬具をつくったりするなど、他の葬儀社さんが進出するのはなかなかむずかしい地域だと思います。

白石 そんな地域に会館をつくられて2年ほど、順調に件数もふえてきていると思うのですが。


秋葉 そうですね。2人の担当者で多いときは月23件施行したときもありました。もともと大手事業者が80~90%のシェアをとっていた地域でしたが、それを1年でひっくり返し、以降は半分以上のシェアをとりトップを走っています。


白石 1年でシェアを覆せた理由は何ですか。


秋葉 大手事業者と同等の内容でよりリーズナブルな価格設定にしましたが、そのことよりも、ちょっとした注文にもすぐ対応する、搬送の依頼があったらすぐ対応し、葬儀のお打合せもすぐに行ない、すぐ日程などを決めるということですかね。


白石 細かなところでお客様のご要望に沿ったサービスを提供していくことの積み重ねで優位性を保ったと。

導入のきっかけはデジタル訃報万全なフォローで十全にフル活用

白石 しおかぜさんは、会館オープン当初からスマート葬儀を導入、ホームページも弊社で制作させていただくなど、おそらく全国でもトップクラスに弊社のサービスを利用していただいているほうではないかと思います。


秋葉 独立しようと考えたとき、何かいいシステムがほしいなと思っていまして、スマート葬儀に出合えてよかったと思います。
 当時いちばん感動したのはデジタル訃報案内です。それまでFAXや電話でお知らせしていた訃報が、SMSやLINEを使って伝えたい人にスマートフォンでダイレクトに届けられる。さらに、そこから供花や供物の注文につながるというのにすごく魅力を感じて、すぐに「スマート葬儀」と決めましたね。お客様からは「こんな便利なシステムがあるのですね」と、好評をいただいております。


白石 訃報案内をLINEやSMSで送ると、意外に供花・供物の注文が来たりするんですよね。


秋葉 来ますね。事務員が電話対応する時間や手間が削減されますし、携帯やPCに直接注文メールが来ますから見落とすこともないです。


白石 あと、しおかぜさんのホームページでは、スマート葬儀の供花・供物の販売ページとも連携しておりますが、そちらのほうはいかがですか。


秋葉 ホームページ上からも多くの供花・供物のご注文をいただきますので、そこも売上げ増加につながっています。


白石 そう実感していただけると、私たちもつくりがいがあります。


秋葉 さらにスマート葬儀は、顧客登録から見積書や請求書作成、アフターフォローまで施行データが紐づけられているのが便利ですよね。たとえば、リピーターさんの過去の情報も検索ですぐに見つかりますし、見積書もワンクリックで自動作成できる。業務にかかる時間を大幅に削減でき、そのぶんお客様に寄り添える時間がふえるのはありがたいことです。いまはクラウド会計ソフト「freee」との連携もできていますから、経理的・財務的な管理も全部スマート葬儀ででき、かつインボイスにも対応しているので、税理士さんも絶賛しております。
 あとは四十九日や一周忌、三回忌といった忌日・年忌法要のお知らせが自動でお客様のスマートフォンに届くので、そこは重宝しています。以前であれば、ハガキや戸別訪問でしかできなかったことですからね。将来的に、返礼品・ギフトやお食事の受注に結びつけられたらと考えています。


白石 ありがとうございます。喜んでいただけて大変うれしいです。ところで、秋葉社長がそこまでスマート葬儀を使いこなせているのは何かポイントがあるのですか。


秋葉 私自身はPCなどを扱うのが好きですが、それでも最初のうちは使い方がわからないことが正直なところありました。しかしLDTさんの担当の方が毎週「ここをタップするとこの画面に飛ぶので……」と一緒に画面を見ながらレクチャーしてくれる。「わからないことがあったらいつでも連絡くださいね」と対応してくれました。そういったフォローが充実していて、自分も知らぬ間に覚えてしまったという感じですね。
 昔ながらの葬儀屋さんのオーナーだと、「PCは苦手だ」という方が結構いるかと思いますが、そうした方でも安心な、親切丁寧なフォローだと思います。そもそもスマート葬儀は、わかりやすい入力の仕方で顧客管理も経理的な管理もできてしまうソフトですから怖がることはない。事務職でも十分に使いこなせると思いますね。


白石 ありがとうございます。もっと使いやすくリニューアルしていければと思っております。来年春くらいまでには、より使いやすいバージョンの提供を考えています。


お客様と密なコミュニケーションを図り地域から認められる存在に


白石 しおかぜさんは新規参入組でも成功しているほうだと思っていまして、この要因は秋葉社長のお人柄、千葉県全域で葬儀をやってこられた経験・知識ということもあると思うのですが、その秋葉社長の視点から葬祭業界全体がよくなるポイントとか、「こうしたほうがいい」といった提言をぜひお聞きできたらと思います。


秋葉 おかげさまで順調に推移しており、近隣の市町村にも新たな会館を計画するなどエリア拡大を考えられるまでになりました。
 もともと私は大手事業者にいて、大手のよさ・強みや大手にしかできないことをよく知っています。同時に大手だとどうしても直接的な売上げ・単価アップの発想になるということもわかっています。
 そのことを踏まえて、弊社が順調に推移できているのは、一見単価は低くても、お客様に寄り添い、満足して喜んでいただける葬儀のサポートに徹したことが地域に認められたからだと思っています。正直売上げにつながらないこともありますが、お客様に喜んでいただければ、そのお客様が今度はよい営業マンになってくれる。「しおかぜさんは無理を言ったのによくやってくれたよ」という方がお客様をふやしてくださっていると私なりに思うのです。


白石 なるほど。しっかりとした対応やフォローをしていくことが先々の葬儀につながっていくと。

秋葉 そうです。あとは地元の寺院さんを必ず訪問して、雑談して、地域の会合や集まりごとにもマメに顔を出して、自分の顔を覚えてもらい「何かあったらしおかぜに」と思っていただけるようにしています。地域住民とのコミュニケーションを絶やさないようにすることが地域密着のよさであり、強みの部分ですね。すぐには売上げにつながらないですが、末永くやっていくためには、特に地方では必要なことではないかと思っています。


白石 なるほど。そこに葬儀社があると認知していただくことと、誰がどんなサービスを提供しているのか。このことを継続的に認知していただくことで評判を保っていくのが地域密着としての差別化になるのですね。大変参考になりました。本日はありがとうございました。


秋葉 ありがとうございました。

参考URL:

かつうらしおかぜホール
https://shiokaze-katsuura.com/

◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。