事業多角化、さらなる成長・躍進目指し「スマート葬儀」を有効活用
【葬儀DX対談】中鉢健二 (有)ちゅうそう代表取締役×白石和也LDT (株)代表取締役
※この記事は月刊フューネラルビジネス2024年4月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
今回は、LDT・白石社長が、宮城県大崎市を本拠に葬祭事業と別会社で廃棄物処理業なども手がける(有)ちゅうそうの代表取締役である中鉢健二氏と対談。同社の沿革や現状、これからの展望などについて伺った。
ルーツはタクシー業の別部門ニーズを拾い上げて葬儀外にも進出
白石 御社の創業から現在までをお話しいただけますか。
中鉢 弊社は、1978年に父が設立したタクシー業からスタートしました。89年に大崎市の家庭ごみ回収事業を受託(別法人)。
葬祭業への参入は97年、タクシー業の別部門として葬祭部中鉢葬儀社ができたときです。私は大学卒業後、広告代理店を経て2001年に20代半ばで入社しました。同業他社で葬儀の仕事を学んだ後、プレハブ1棟を与えられほぼ1人で仕事を回していましたね。同年に、大崎市から大崎広域玉造斎場(炉数2基)の管理運営を受託。
これはいまでも継続しており、東日本大震災のときは私が火葬予約の受付をしていました。葬祭会館は、08年の「葬祭会館セレモニー鳴子」を皮切りに、13年に「葬祭会館プラムストーン」、20年に「葬祭会館クオーレ」をオープンしました。クオーレは昨年12月、2階にペット同伴専用エリアを新設し、ペットを同伴できる葬祭会館へとリニューアルしました。
また、10年以上前から遺品整理事業を手がけ、17年には一般廃棄物・産業廃棄物処理事業の別会社を立ち上げ、それに伴い現社名に変更し、私が代表に就任しました。
翌年には葬儀と介護のシナジーで人生最期の困りごとに応えられるモデルを構想し、取締役の妻が介護事業を開始しました。22年には弊社や大手火葬炉メーカーを含む8社からなるコンソーシアムが、大崎広域新斎場(26年4月開業予定、炉数6基)の整備・運営事業を落札。26年度から20年間の契約で、新火葬場を運営することが決まっています。
白石 事業展開が多岐にわたり、視野の広さを感じますね。やはり社長が広告業出身だからでしょうか。
中鉢 広告代理店にいたとき、とある企業の会長さんの「お別れの会」に携わり、湿っぽくない、笑いもある会を実現しました。
会の終了後に「ありがとう。本当にいいお見送りができました」と言われました。感謝されるなんて広告業ではまずあり得ないことで、それがきっかけで実家の葬祭業を継ぎました。ですから、業界に入ったとき、従来からの葬儀をしたいとは思いませんでした。
お客様から「葬儀屋!」と強い口調で呼ばれるような状況を変えたい、若いスタッフが「面白そうだ」とやりがいをもってくれそうな仕事がしたいとも思っていました。もともとやっていたごみ回収については、うまく活用すれば事業を拡大できると考えていましたし、葬儀の現場から聞こえてくる「葬儀後に出るごみをどうにかしてほしい」「遺品や家の処分をどうしよう」といったニーズを拾い上げて形にしようとやってきました。
スマート葬儀導入で紙ベースの業務を解消情報処理・共有を効率化
白石 御社のホームページを見ますと、ユーザーの質問にリアルタイムで返答する「チャットボット」を採用されていて、葬祭業界ではあまり見られない先進性がありますね。
中鉢 いまのサイトは数年前に作成したもので、今年中にリニューアルします。弊社は何でも社内で完結するのが特徴で、昨年末に作成したペット同伴葬祭会館のチラシもDTPは社内で行ないました。サイトも社内で作成するつもりです。葬儀社の顔としてサイトは大事ですよね。
白石 ホームページは大事だと思います。他社との差別化だけでなく、つくり込んだホームページは採用にもつながります。いまは採用難の時代で、人材にとって魅力のない会社は黒字でも続けていけなくなるでしょう。御社は継続して発展していく企業だと感じています。
中鉢 ありがとうございます。若いスタッフにもっと業界に興味をもってもらいたいと思っており、eスポーツ大会を社内で開催するなどの試みもしています。スタッフに楽しんでもらい、それを発信することで「この葬儀社ではいろいろなことができる」「葬祭業界でもこういう会社がある」と思ってもらうだけでもいいのではないかと。
白石 御社はデジタル化に積極的で、昨年には「スマート葬儀」を導入されましたが、その経緯やご意見などをお伺いできますか。
中鉢 以前の業務は紙ベースで、各会館への移動に30分かかりますから、情報処理・共有はたいへんな手間でした。本部で紙のファイルを開き、それを見て取引先やお客様に電話をかけることがよくあったのです。
昨年、フューネラルビジネスフェアへ行き、LDTさんのブースでスマート葬儀をはじめて見ました。その前から他社のデジタルツールを勧められていましたが、スマート葬儀は葬祭事業に特化している。それで導入を決めたのです。
補助金も活用して、いまではスタッフ1人ひとりがタブレットを持ち歩き、スマート葬儀を使いこなしています。いつでもどこでも情報を検索でき、いまの進捗状況などの“見える化”ができたのがすごい強みになります。本当に導入してよかったなと思います。
白石 ありがとうございます。スマート葬儀は現在リニューアルを進めておりまして、見える化ができる分析機能の拡充にはご期待ください。
また、現行の機能でも見積りシミュレーションやeコマースでサイトとの連携を図る事例も出てきていますので、サイトリニューアルでもお手伝いできることもあるのではないかと思います。
中鉢 これはスマート葬儀というよりLDTさんへの今後の期待ですが、以前伺った火葬場予約システムをぜひ全国に普及してほしいですね。
先に申し上げた東日本大震災での経験ですが、深夜2時3時に「家族の遺体が見つかったから」という火葬予約を衛星電話で受け続けたのです。LDTさんのシステムであれば深夜に電話を受ける必要もなく、災害時でも強いと思います。
白石 火葬場予約システムは、導入された山形県米沢市の火葬場で好評をいただいております。
将来的には葬儀社のスマート葬儀と火葬場のスマート火葬予約が連携して、スマート葬儀から火葬予約ができるようにという構想ですので、スマート火葬予約のエリアがもっと広がるのをお待ちいただければと思います。
中鉢 全国普及に期待しています。
「家財整理」受注は葬儀の約半数将来的なホールディングス化も企図
白石 別会社で一般廃棄物処理業、遺品整理も手がけられています。以前私も遺品整理のWeb集客会社を経営していまして、葬儀社が葬儀のアフターで直接受託すれば収益になると考えていました。御社はそれを早くから行なっており先見の明があると思います。
中鉢 お客様のニーズを拾い上げて形にしてきました。ごみ収集や廃棄物処理の会社ですから、買い取り分野が課題で、M&Aで手を伸ばしていきたいところですね。
白石 葬儀件数に対しての依頼はどれくらいですか。
中鉢 葬儀受注の半分ほどはお声がけいただいています。お家まるごとの依頼で100万円を超える受注や、1部屋だけで2、3万円で終わるもの、高齢者施設で入居者が亡くなった後の居室の片付けなどすべて含めての話ですが。
白石 半分とはすごいです。葬儀で直接関わりをもっての提案ができるのは強みですね。
中鉢 葬祭会館の至るところに、葬儀後のプランとして案内を貼り出しています。「遺品」に絞るとほかの依頼が来ないので、「家財整理」と呼んでいます。
白石 家財整理。さすが広告業をやっておられただけあって、キャッチーなワードを選ばれていますね。最後に今後の展望等をお伺いできますか。
中鉢 大崎市内に会館をふやすことを考えています。ただ、これはスタッフの確保がネック。やりたいことはたくさんありますが、地方では特に採用難が顕著です。グループとして成長するため、M&Aも積極的に進めます。
ターゲットは葬祭業や産廃事業者、介護、あるいは飲食など、既存事業とシナジーが期待できる業種です。後継者のいない優秀な会社は地方にも多くありますので。ゆくゆくはホールディングス化して、私に付いてきてくれた社員に社長になってもらいたい。社員が70、80歳になっても勤められる、100年後も次の世代にバトンタッチできるようなグループをつくりたいと考えています。
白石 本日はありがとうございました。
中鉢 ありがとうございました。
参考URL:
(有)ちゅうそう
https://oosakiihinseiri.jimdofree.com/
◆この記事の監修者プロフィール
LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。