「スマート葬儀」導入で記念日・法要など生花需要を創出

【葬儀DX対談】宮島浩彰 (株)日比谷花壇 代表取締役社長×白石和也LDT (株)代表取締役

※この記事は月刊フューネラルビジネス2024年5月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。

今回は、LDT・白石社長が、生花小売業を本業としながら葬祭事業など幅広く事業展開する (株)日比谷花壇の代表取締役社長を務める宮島浩彰氏と対談。同社の現状と受発注システム「葬儀版LINKS」と「スマート葬儀」の導入などについて伺った。

葬儀プロデュースだけでなく 葬儀社向けコンサルティングなども展開

白石 日比谷花壇さんの創業から宮島社長が承継されるまでの大まかな流れをお聞かせください。

宮島 当社の創業は1872年ですので明治5年になります。1944年に帝国ホテルに出店、パーティ会場向けの装花スタイルを確立しました。会社設立は50年、戦後復興の一環として日比谷公園内にフラワーショップを、と当時の都知事から要請されたのがはじまりです。

その後、お別れ会の装花にも携わるようになり、吉田茂元総理の国葬(67年)で飾られた祭壇は日比谷花壇謹製になります。95年にはインターネットサイトの販売サービスを開始。実は当社が国内で最初にインターネットで物を売った会社の1社なのです。

私は、大手不動産会社や造園・建設会社を経て、97年に入社。同年に取締役となり、経営企画やEC事業構築などを経て、2000年に代表取締役社長に就任しました。04年には葬祭業を立ち上げています。

白石 葬祭業へ参入された背景をお伺いできますか。

宮島 長期的にみて、生花のブライダル需要が減ることは予測していました。そうしたなか、以前からホテルでのお別れ会をお手伝いしており、お客様の要望に応えて小規模なお別れ会も結構手がけていたのです。

葬祭事業を本格的に立ち上げるにあたっては、葬儀の元請けをはじめたら、生花業としての下請け仕事の依頼がなくなるのでは、という意見も社内では根強くありました。そこで幅広い年齢層のお客様を対象に、「日比谷花壇がお葬式を直接施行したらどう思いますか?」と質問してみました。その結果、どのお客様からも熱烈な支持をいただきまして、それで個人向けのお葬式サービスを開始しました。

事業を立ち上げてからも、お客様には助けられました。祭壇にキク以外のさまざまな洋花を使用することや、無宗教葬への対応なども、すべてお客様ニーズから形となり実現したものです。

白石 お葬式サービスだけでなく、葬祭会館の開設や、ペット葬、お葬式の会員制度「オハナクラブ」、葬儀社向けコンサルティングなど多様な展開をされていますが、それぞれの独自性についてお伺いできますか。

宮島 お葬式については、やはり花祭壇にはこだわっていますね。花祭壇をつくり上げるまでには、事前打合せでお客様に寄り添ってコンセプトやデザインを考え、その場に現場スタッフが同行し受注するのですが、それは、当社が長年培ってきたウエディング事業でのノウハウを活かしたものです。

葬祭会館は2会館あり、いずれも家族葬が選択される世の中の流れに対応したものです。「メモリアルハウス 花堀江」(大阪市西区、2012年開設)は、邸宅葬をコンセプトとした2棟貸切型の家族葬専用ホールです。「メモリアルハウス 花ときわ」(さいたま市浦和区、2019年開設)は、シンプルにごく少人数でゆっくりと故人とのお別れの時間を過ごしていただける、カジュアルで明るい雰囲気でありながら花と緑にあふれた空間が特徴で、最寄り駅からも徒歩5分と利便性の高いホールです。

ペット葬もお客様ニーズに応えてはじめたことの1つです。オリジナル商品「虹のフラワーバスケット」や「猫のための花かんむり」は、お花で囲まれたペット葬をコンセプトとしており、お客様からの評価も高く受注件数もふえています。「オハナクラブ」は当社のお葬式の会員制度です。

お花のファンクラブというよりも、終活や葬儀も意識し、当社のご利用者のコア世代である50~60歳代よりも少し上の年代の方々もターゲットにしています。両親やパートナーの最期もお手伝いするというスタンスで会員を組織化し、現在は会員数4,000人を突破しています。

葬儀社向けコンサルティングについては、葬儀社の主に生花部門のクオリティコントロール、デザインコントロールなどで自社のノウハウを提供しています。そのほかにも、ブランドプロデュースを請け負ったり、共同での商品企画、人材育成を請け負って、デザインの考え方や仕入れの方法について指導したり、あるいは同一グループで複数ある生花店スタッフに向けた技術試験の仕組みづくりをすることもありますね。

葬儀にこだわる現場の人材と アフターフォローに寄り添う人材をマッチング

白石 御社からは受発注システム「葬儀版LINKS」のシステム開発を受託し、継続して開発のご依頼をいただいております。

宮島 「葬儀版LINKS」は、まさに葬儀社向けコンサルティングに関係する部分です。さまざまな葬儀社の生花部門では、運営のコントロールに苦労されているとよく聞きます。そこでプラットホームをつくっていただいて、その仕組みのなかで生花部門のコントロールやデザインの考え方、つくり方、発注の仕方までサポートできるようにと考えました。

これからFC展開をはじめようとしている方、傘下に置く複数の生花店のクオリティがバラバラのため平準化、かつ水準を上げたいと考えておられる事業者さんなどにとっては、相当有用な仕組みになるでしょう。

白石 「スマート葬儀」もご導入いただいておりますが、導入した経緯や期待することなどをお伺いできますか。

宮島 導入意図の1つに、アフターセールスの充実があります。花屋さんは、お客様に一度ご利用いただくと、その後のライフタイムのなかで、結婚記念日などの記念日や、葬儀であれば年忌法要などの際に再び利用していただける機会があります。そこのフォローをもっときちんとやるべきだと考えました。

実は、これまでその部分は社内で手づくりした仕組みで対応していました。社員がつくったシステムで現場は回っており、日々の業務には困りませんでしたが、アフターフォローまでは細やかにできていなかったのです。そこで、業務のアップデートのためにスマート葬儀を導入しました。

現状、過去のシステムがさまざまな情報・データなどとつながっているため完全導入はできておらず、切り替えるためにいろいろとカスタマイズしてもらっている状態ですね。

白石 スマート葬儀は、リニューアルによりさらにユーザビリティが向上しますのでご期待ください。

宮島 はい、期待しています。アフターフォローが思うようにできていない理由の1つとして、「寄り添う人材」の不足があります。受注担当者・施行担当者に加えて、お客様のその後のライフタイムに寄り添う人材を投入することで、お客様のアフターフォローをより丁寧に行ない、PDCAサイクルを回していくのが理想です。

白石 葬儀後の不動産であれば、お客様ときちんと寄り添ってやっているところは1%以上受注していますし、地方の葬儀社で相続25%、遺品整理も50%の受注という会社もあります。そうした会社はやはりコールセンターからの電話ではなく、お客様と直接対話して、寄り添うというアフターフォローをしていますね。

宮島 葬儀施行の担当者は、葬儀をいかに充実させるかに集中しアフターフォローに目がいかない、ということがあるでしょう。当社もそのスパイラルに陥っていたと思います。お別れ会では、感情移入して当日のクオリティをいちばん重視しがちです。もちろん、感情移入して葬儀施行の充実にこだわることも非常に大事です。

ですので、葬儀にこだわりをもち、最大限の力を発揮する人材とアフターフォローを重視した寄り添う人材とを組み合わせてやっていきたいと考えています。実はグループ会社として人材サービスの会社を立ち上げました。

以前から、ウエディングの司会者を葬祭会館の司会に派遣するということはやっていたのですが、これからは派遣ではなく、専門技術を有した人材を紹介して業務委託の領域で展開していくつもりです。すでに葬祭関連でも、お花の技術者などから結構引き合いが来ていますね。専門技術をもった人材がサポートすることで、さらに業界に貢献していければと思っています。

白石 本日はありがとうございました。

宮島 ありがとうございました。

参考URL:

(株)日比谷花壇

https://www.hibiya.co.jp/

◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。