業務効率化のためのクラウド移管「スマート葬儀」導入で社内DXが浸透

【葬儀DX対談】吉池 征晃 (株)よしいけ 常務取締役×白石和也LDT (株)代表取締役

※この記事は月刊フューネラルビジネス2024年6月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。

今回はLDT・白石社長が、「スマート葬儀」を導入し、葬祭事業およびレストラン事業を手がける(株)よしいけ(本社長野県中野市、社長𠮷池邦彦氏)・常務取締役の𠮷池征晃氏と対談。システム導入のきっかけや現況、今後の展望などを伺った。

葬祭会館4か所の運営に加え お客様ニーズに応えレストラン事業にも参入

白石 はじめに、御社の創業から現在までの沿革についてお聞きかせください。

吉池 弊社は、1972年に祖父が長野県中野市で(有)吉池造花店として創業しました。

96年に中野市内初の葬祭会館「セレモニーホール中野」(現ベルホール吉池中野会館)を、2005年には東隣りの山ノ内町に町内初の葬祭会館「ベルホール吉池山ノ内会館」を開設し、2会館で中野・山ノ内エリアのご葬儀に携わってきました。

10年に(株)よしいけへ商号変更し、中野市に「ベルハウスレストラン トゥー・パパロミオ」をオープンしました。通夜や葬儀後の会食は慌ただしいなかで進むことが多いと思いますので、法要等においては故人を偲ぶために集った方々がくつろげる、落ち着いた雰囲気の空間を提供しようとレストランをはじめたのです。

13年には中野市に家族葬会館「ベルハウス アスビー・リビング」を、20年には西隣りの長野市にも家族葬会館「ベルハウス稲田 アスビー・ビアンカ」をオープンしてエリアを拡大し、いまに至ります。

白石 ありがとうございます。お客様によりよいサービスを提供する、ホスピタリティを向上させるためにレストランもつくられたということですね。葬祭事業とレストラン事業のシナジーなども考えられたのでしょうか。

吉池 四十九日や一周忌法要での会食に利用してもらい、お客様をつなぎ止める効果を発揮していると思います。

白石 なるほど。葬祭事業の競合状況はいかがですか。

吉池 中野・山ノ内エリアでは、精力的に展開している葬儀社で件数を分け合っている状況です。長野市では後発になりますが、順調に件数は伸びています。

もともと中野・山ノ内エリアで弊社が施行したお客様が長野市に転居され、そのような方々から「長野市でも」という声を受け、そのニーズに応えるために展開しているというところです。

白石 御社で施行したお客様は近隣エリアに転居されても、御社に任せると安心だと信頼を得ているのですね。お客様に選ばれているポイントは何だと思いますか。

吉池 アンケートを見ると「親身になってくれた」などの回答が多く、やはり「人」の部分で選ばれている。満足していただいているのではないかと思います。

スマート葬儀導入理由は 「クラウドだったから」

白石 スマート葬儀を導入いただいていますが、そのきっかけや導入後の所感などをお聞かせください。

吉池 きっかけは、端的に言うと「クラウドだったから」です。もともと使用していたシステムが社内のパソコン(PC)でしか使えないものだったのですが、見積書や請求書はそのPCを取り扱う従業員以外も必要になります。円滑に業務を進めるには、「どこからでも」「誰でも」アクセスできるシステムが必須と考えました。

既存のシステムでは、他のPCからアクセスするには新たにソフトウエアのインストールが必要で、拠点をまたぐ場合は特にデータベースへのアクセスをどうするかといったハードルがいくつもあり、それらをクリアするよりは違うサービスに、つまりクラウドに移行して運用していくのがベストだと考えました。そこを重視し探していくなかで、スマート葬儀を見つけたということです。

白石 現在のソフトウエア業界だと、やはりクラウドサービスが主流ですね。将来的にもクラウドサービスがAIの活用により、より進化していくと予測されています。吉池常務がおっしゃるとおりで、どこからでもアクセスできるということと、アップデートの容易さが理由です。

業界・業種を限定したバーティカルなもの、限定しないホリゾンタルなものでも、法改正対応など必要なアップデートが随時できるというメリットがあります。

特にバーティカルな、たとえば葬祭業界に特化したサービスを考えたとき、就労人口が激減する2027年以降を想定して業界全体の業務を「共通のオペレーションをもつ部分」と「各社の独自性をもつ部分」とに仕分ければ、「共通のオペレーション」については当社の「スマート葬儀」を使用することでコストダウンや必要なアップデートができるようになります。

そのうえで、ホスピタリティや付加価値を生む「各社の独自性」で勝負してもらうという業界構造を構築すべきだと思っております。そういった部分で葬祭業界のお役に立てたらと提案しているのがスマート葬儀です。

御社の場合、吉池常務の主導でシステム導入を進められ、スムーズに社内で業務効率化が図られていると弊社の担当から聞いております。次代の育成がたいへんうまくいっている会社さんだと感じますが、従業員教育で何か意識されている点はございますか。

吉池 従業員教育といいますか、スマート葬儀導入にあたっては、従来のやり方をスマート葬儀を中心とするやり方に変えていくという点で苦労はしました。

誰しもいままでのやり方がいちばん楽で、慣れているので変わることがむずかしい。そうではなく、新しいやり方に移行する気持ちになってもらうことが必要ですから、いかに「新しいやり方のほうが楽で、効率的」「空いた時間をお客様へのサービスに充てられる」という意識を浸透させるか、その工夫はしました。

スマート葬儀だけではなく、ほかのツールも使用し、うまくそちらに誘導するような仕組みにしました。業務に組み込むことで、自然にそちらに流れるということを意識しています。

白石 それは流石ですね。新たなシステムを導入するとき、経営者が丁寧に準備をされる会社というのは、葬儀社ではかなり稀なのではないでしょうか。続いて、今後の展望をお聞かせください。

吉池 「地に足をつけて」とでもいいますか、あまり冒険をするような計画は立てていません。「お客様に選び続けてもらう」ということに重点を置いています。中長期的には新店舗オープンも視野に入れていますが、直近では計画していません。

白石 エリアによっては、拡大するのではなく、エリア内の人口、将来の死亡者の予測数から逆算して適正な事業規模を保っていくことも重要かと思います。

大手葬儀社の経営者の方々から話を聞くと、家族葬ホールの出店攻勢をできる期間はあと3年くらいとみておられる方が多いと感じます。その後は積極的に会館展開している会社が中小規模の葬儀社をM&Aする、あるいは地方の何社かでホールディングスを形成してドミナント展開していく、葬祭業界はそのような流れになっていくのではないかと感じています。

吉池 その「地方の葬儀社何社かでホールディングスを形成」というは、どのような形態のものですか。

白石 ホールディングスの一歩手前というか、地方で組合をつくって、組合として夜間搬送をまとめて搬送会社に委託したり、求人募集アプリを活用してエリアにある会館の清掃を委託したり、といった取組みが最近ふえています。業務効率向上と人材不足への対応ですね。

吉池 参考になります。弊社でもレストラン事業で求人募集アプリを利用したことがありますね。

白石 LDTでは、そうした労働力シェアリングのためのプラットフォームが葬祭業界にも必要だと考えまして、「スマート葬儀ジョブ」のサービスを開始しました。

いまはまだ葬祭に関する求人サイトと人材紹介が中心ですが、将来的には葬儀社が求職者に直接スカウトメールを送れるようにして採用コストを下げたり、納棺の儀だけを高レベルな納棺師に発注できたりするようなプラットフォームを目指します。

吉池 なるほど。労働人口が減少するなかで、業務効率向上と人材不足への対応は大事ですね。当社は、会館展開やエリア拡大よりは、お客様に選び続けてもらうことを大切にしています。

そのうえで、「昔ながらの、大勢集まって故人を偲んで、思い出を語らう」という葬儀の本質をもち続けながら、今後もお客様ニーズに沿ったサービスを提供していこうと考えています。

白石 本日は貴重なお時間をありがとうございました。

吉池 ありがとうございました。

参考URL:

(株)よしいけ

https://www.yoshiike-bell.com/

◆この記事の監修者プロフィール

LDT株式会社 代表取締役CEO
白石 和也
2014年リベラルマーケティング(株)を創業し、終活関連サービスのオンライン集客で日本最大級のサイトを運営。2020年東証プライム上場の(株)Link-Uに売却。
2016年ドローンパイロット派遣会社を立ち上げ、大手インフラ企業のDXソリューションの開発などに従事、2018年同社をNASDAQ市場へ上場したエアモビリティ開発会社のグループへ売却。
2019年9月当社を創業。