公開日時:2026/7/13
葬儀社対談
【葬祭関連協会対談】鳥居充氏[東京都葬祭業協同組合 理事長]× 白石和也[AgeRobotics㈱ 代表取締役CEO]

※この記事は月刊フューネラルビジネス2026年7月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
AgeRobotics㈱は、葬祭業界に特化した顧客管理システム「スマート葬儀」の提供を通して葬祭業界のDXを推進するなど、エンディング領域で幅広く事業展開している。今回は同社代表取締役CEOの白石和也氏が、東京23区の専門葬儀社を中心とした東京都内の地元密着型葬儀社で組織され、153社が加盟する団体・東京都葬祭業協同組合の鳥居理事長と対談。東葬協の概要や23区内の葬儀社の課題、今後のビジョンなどについて伺った。
白石 東京都葬祭業協同組合(以下、東葬協)の概要と鳥居理事長の歩みを教えてください。
鳥居 東葬協は1935(昭和10)年、商業組合法という法律で認可され誕生した「東京葬祭具商業組合」を前身としています。当時の組合員は863人でした。この組合は第二次世界大戦中に戦時統制組合へ改編され、戦後に解散するのですが、49年の中小企業等協同組合法の成立に伴って「東京葬祭業協同組合」として再編され、その後53年に現在の「東京都葬祭業協同組合」となり、いまに至ります。
現在の加盟葬儀社は153社。「近代化を促進し、社会の公器としてさらに公共福祉に奉仕する」「民族の精華死生観を確立して精神社会に貢献する」「葬祭文化の前衛となって、国民が望むセレモニーを確立する」「信義と友愛を信条として共存共栄を図り、明るい業界を形成する」という宣言のもと、全国最大の組合として、全日本葬祭業協同組合連合会に加盟、都内5つの協同組合によって形成する全東京葬祭業協同組合連合会(以下、全東葬連)にも参加しています。
消費者にとって葬儀をより納得できる内容にする、専門葬儀社にとって有益な取引ができるようにするといったサービス活動だけではなく、社会貢献という観点から各自治体と災害協定を結ぶなど、地域の一員として本業と社会全体の利益に奉仕できるように努めています。
私自身は、30年に創業し71年に法人化された鳥居本店の三代目です。都内江東区台東区で生まれ育ち、高校卒業後は渡米して大学と大学院に行き、ジャーナリズムとマーケティングに関する修士号を取得しました。その後現地で1年ほど広告代理店に勤務後、日本本社のゲーム会社現地法人から打診を受け、人気RPGのアメリカ版マーケティングを担当。約3年後に別の日本のゲーム会社現地法人へ移り、別の人気RPGのアメリカ版の移植プロデューサーを務めました。計12年ほどアメリカにいましたが、ゲーム会社の合併を機に退職・帰国し、父が高齢だったこともあって家業を承継したのです。
東葬協では、当初、組合青年部に参加し、約54年前に打診を受けて理事を務めた後、昨年理事長に就任しました。
白石 業界としてはなかなか異色の経歴ですね。
鳥居 そうですね。まったく畑違いのゲーム業界にいたからこそ、葬儀については一消費者の視点、どんなサービス・商品が求められるか理解を深めることができたと思っています。また、ゲーム業界での経験があってこそ、DXやAI活用といったことにも柔軟に対応できているのではないでしょうか。
白石 東葬連東葬協さんとして感じている、現在の23区内における葬祭業界の課題についてお聞かせください。
鳥居 東葬連東葬協としては、23区内の葬祭業界の最大の課題は、23区内の火葬を民間業者に寡占的に依存しているということだのがそもそもの問題だと受け止めています。これは民間火葬場がどうこうではなく、条例において亡くなった方は事実上火葬しなければならないルールをつくりながら、他方で行政が低廉な火葬サービスを潤沢に提供できていないという意味です。もちろん公営火葬場をふやすにはさまざまな障壁があるため、東葬協東葬連として「低廉な公の火葬場をどうやってつくっていくか」という意見交換を行政と行なっているところです。
ほかの地域も同様だと思いますが、コロナ禍により葬儀の小規模化が一層進んでいます。今年4月においては、2日葬が20%弱、1日葬が40%強、実に40%以上が直葬というデータがあります。コロナ禍前は通夜・葬儀をきちんと行なっていた人が半数以上で、直葬は10~20%程度だったと思います。葬儀社も大きなダメージを受けましたが、料理仕出し屋さんや、生花店、返礼品・ギフト屋さんなどはそれ以上のダメージでしょう。
だからといって、葬儀の規模を昔のように戻すのはむずかしい。そうではなく、いまと向き合う、消費者が小規模な葬儀を希望するのであれば、そこでいかにサービスを充実させて提供し、どう売上げを伸ばすかを考える柔軟さが必要です。われわれは過去の経験に裏打ちされた新しいサービスを提供できますから、それに価値を見出してもらえるように流れをつくる必要があります。
いま求められているのは消費者のニーズに答える柔軟性、あとは新しいものを受け入れる寛容さですね。
白石 今後さらに加速する「多死社会」「就労人口の減少」に対し、葬儀社はどう対応していくべきでしょうか。
鳥居 「多死をするのは誰か」と考えると、今後23区内でお亡くなりになる方は日本人とは限らず、日本の伝統的な宗教を信じている方だけが亡くなるわけでもありません。ですので、外国人の方の登用、他の文化・宗教の葬儀に長けている方を登用していく必要があると思っています。
就労人口の減少については、約30年前は葬儀への派遣業者はなく、仲間内で手を借り合って施行していました。いま、東葬協だけで150以上、全東葬連の括りでは250近くの加盟葬儀社があります。組合員同士が連帯すれば、派遣に頼らなくても済む仕組みができるのではないでしょうか。「手を借りるとノウハウをもっていかれる」と心配する人もいますが、情報を共有し協力することで新しいサービスを提供できるようにする、という流れをつくっていく必要があります。
白石 今後の経営、組合運営のビジョンについて、伝統を重んじつつ、DXなど効率化や人材確保のために取り組むべき施策はないでしょうか。
鳥居 「伝統を重んじつつ」というのが鍵だと思います。こだわるべきところをきちんとこだわれるのは、やはり伝統に裏打ちされているから。とはいえ、「こだわりすぎ」の部分が業界にはあり、そこをDXで簡素化・効率化していくことが必要でしょう。組合員が高齢化し、新しいものを受け入れるのはハードルが高いのですが、組合として「一緒に学ぼう」とDXに関する勉強会を開催したりしています。
葬祭市場は今後さらに規模が拡大していきますが、消費者が葬儀に対してお金をどれぐらい使ってくれるのか甚だ不透明で、縮小する可能性もあります。そのなかで格安葬儀社が出てきたからといって、マネーゲームに乗る必要はないと思っています。最終的に、お客様がご納得しご満足していただければ、そのサービス内容に対しての対価はお支払いいただけるものですし、結果として売上げは上がるものです。
白石 当社AgeRoboticsは、葬祭業界特化のシステムのスマート葬儀や人材紹介サービスのスマート葬儀ジョブを提供しています。当社のようなIT企業や外部パートナーに期待すること、メッセージがありましたらお願いします。
鳥居 東葬連東葬協に加盟している専門葬儀社は小規模であることが多いですから、DXでの業務効率化は大きなプラスになります。また、高齢化している葬儀社も多いため、DX化にはハードルが感じられることが多いと思います。特にIT企業の方々に関しては、どうやったらわれわれの業務を簡素化・効率化できるのか、また、この進化を受け入れやすくするための工夫、ここに注目してご提案いただけるとありがたいです。
もう1つ、これはIT企業の方々だけではないのですが、われわれが現在提供するしているのは伝統に裏打ちされた葬祭サービスが中心ですからので、宗教と深く関係するサービスになります。今後は宗教行事でない葬祭サービスを希望する消費者が多数派になる増加する傾向になると思います。ですので、特に他業種から参入された事業者の方々には、「いまの消費者はこういう葬儀を希望している方が多い」「こうしたサービスを提供すれば売れると思います」といった提案を継続して行なっていただきたい。そうした提案に対してわれわれも寛容に受け止めていきたいと思っています。
白石 本日はありがとうございました。
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