公開日時:2025/10/21
葬儀社対談
【業務デジタル化対談】西井 薫氏[㈱ハース・ジャパン 代表取締役社長]× 白石和也[LDT㈱ 代表取締役CEO]
※この記事は月刊フューネラルビジネス2025年8月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
LDT㈱は、葬祭業界に特化した顧客管理システム「スマート葬儀」の提供を通して葬祭業界のDXを推進するなどエンディング領域で幅広く事業を展開している。今回はLDTの白石和也CEOが遺体の搬送を担う霊柩自動車運送事業やコールセンター事業を主業務とする㈱ハース・ジャパンの西井薫社長と対談。同社の業務内容やエリア拡大の要因、業務のマニュアル化、自社で開発した業務効率化システムとスマート葬儀との連携予定、今後の展望などについて伺った。
白石 貴社の沿革や業務内容についてお聞かせください。
西井 弊社は2004年に名古屋市で創業した霊柩搬送会社です。個人出資で創業し、以来、現在に至るまで葬儀社さんの資本は入っていません。当初は、新興の葬儀社さんの霊柩搬送を請け負う会社としてスタートし、しだいに取引先を広げ、新たな出資者を迎えて経営陣を刷新、20年に現在のハース・ジャパンに社名を変更しました。サービスの中核は、出棺や亡くなった方のお迎えといった霊柩搬送です。その後、葬儀社さんからの要望に応えてコールセンター事業を開始し、現在では業務代行事業に発展しています。
業務代行では、コールセンターで葬儀社さんから業務を受注したのち、ご遺体の搬送・安置から枕飾りの設置、葬儀受注、火葬場予約、宗教者手配までを代行し、ご遺族に翌朝までに準備しなければならない事項をお伝えしたうえで、葬儀社さんの担当者に引き継ぎます。訪問時に「業務代行のハース・ジャパンです」と名乗りますから、ご遺族からは「葬儀に詳しい、相談に乗ってくれる第三者」とみられているでしょう。ですから、お客様からさまざまな相談・要望を受けることが多くなります。たとえば、ご遺体に関する要望を受けたときは、エンバーミングサービスについて説明し、受注につなげたケースもあります。また、弊社は各種の専門家とも連携して死後事務手続きサポートを提供しており、その案内をすることもあります。当初は業務代行を夜間に限定していましたが、しだいに「昼間もお願いしたい」と依頼がふえたことから、現在は昼間も対応しています。
白石 貴社の特徴をひと言で言いますと。
西井 お客様や葬儀社さんからの要望を受けてサービスを構築していくことです。たとえば、東京と名古屋、大阪に遺体安置施設を設け、大阪の施設では葬儀社さんの要望で葬儀専用の小型貸し式場を併設しました。また、私自身の前職がWeb広告業という経験を活かし、葬儀社さんに広告・求人面におけるITサポートも行なっています。
エンドユーザーであるご遺族の要望を受け、少額短期保険の取扱いもはじめました。多くのご遺族がお金の問題で悩まれます。少額短期保険は月額数千円の掛金で万が一の際は50万~300万円が支払われるもので、通常の生命保険と異なり配偶者やお子さんの了承を得られれば第三者、つまり葬儀社さんへの支払いが可能です。ご遺族はお金の心配なく理想の見送り方を考えることができ、最良の形での葬儀施行が可能になります。
白石 なるほど。ニーズを受けてサービスを発展させているわけですね。主軸となる霊柩搬送事業ですが、名古屋を中心にエリアを拡大されていると伺っております。現在の対応エリアはどこまでになりますか。
西井 日本全国で対応可能です。ただし、お迎えなど急な対応となると、営業所のある愛知・岐阜・静岡の浜松市近郊と長野県飯田市・伊那市、東京の大田区とその近郊、そして豊中市を中心に大阪の北摂から兵庫県の東部に対応しています。
白石 搬送事業でのエリア拡大は珍しいと思うのですが、拡大を実現できている要因は何でしょう。
西井 要因は2つあります。1つは、取引先様に選んでいただいたことです。実は弊社から、エリア拡大に向けたアクションは起こしていません。既存の取引先様から「このエリアに来てほしい」と相談を受け、営業所を出せると判断したところに進出しているのです。
もう1つは、業務がすべてマニュアル化されていることです。たとえば、スタッフが足りないときに私が不慣れな現場を手伝うとしても、そのマニュアルを読めば30分で理解でき、しかも2、3回の現場経験がある人ならある程度業務がこなせるレベルのものが用意されています。もちろん、各営業所にしっかりレクチャーできる人材が揃っていますし、マニュアルも常にブラッシュアップを続けています。新たなエリアでも、既存の内容と異なる部分だけを修正すればマニュアル化が可能です。最近は社内に教育課を設け、定期的な教育ミーティングを実施してサービスの平準化にも努めています。そのため、社員の7~8割が業界外の出身にもかかわらず、人材教育・育成は非常に上手くいっています。そして2つの要因の根底には、素晴らしい人たちが弊社で働いてくれていることがあります。
白石 弊社のスマート葬儀を導入いただいている葬儀社様でも、貴社の搬送事業やコールセンター事業の導入がふえています。多くの葬儀社様が貴社は夜間の入力業務に対応してくれることを評価されていますが、これが実現したのもマニュアル化のおかげなのでしょうか。
西井 マニュアル化や現場の頑張りも大きいのですが、いちばんは「新しいものを受け入れる文化があった」ことだと思います。いまでも営業所では、「こういうサービスをしてほしいと依頼を受けたが、どうすればできるか」ということがよく議題にあがります。そのようなときは、「こう変えてくれたら実行できます」と弊社がやり方を提案することがあります。業務代行事業の目的は、「葬儀社の方に安心していただく」ことであり、それこそFAXしかないような状況でも「なるべく早く情報共有を」という要望に応えていました。ですから、スマート葬儀への夜間入力は、ツールが変わっただけという言い方もできます。
白石 貴社が開発中で、近々ローンチ(市場投入)される搬送業務効率化のシステムは、スマート葬儀とも連動をしていただけるという話ですが。
西井 開発中の搬送業務効率化システムは、霊柩搬送の予約管理に特化し、加えて霊柩車以外の営業車両・物品の管理や安置状況確認の機能があるものになります。現状、各霊柩車がどこでどの仕事をしているかは電話で確認しホワイトボードに記入して管理していますが、これだと効率的な配車は個人の技量頼りです。さらに、空車がないと電話をする葬儀社の方は、延々と複数の霊柩搬送会社に電話しつづけることになります。これでは、葬儀社さんも、その電話対応に追われる搬送事業者も大きな負担ですし、ご遺族にとっても空車がなかなか見つからない状況を目の当たりにしてとても不安になるでしょう。そこで、飲食店の空席確認や宿泊業の空室確認のように、ご遺族との打合せやスマート葬儀で入力しながら、画面の隅で空車状況を確認して簡単に霊柩車を押さえられるシステムを開発しました。これをスマート葬儀と連動させて、セットでお客様に勧めていければと考えています。多くの葬儀社さんに導入いただければ、会社を問わず空車を一覧でお見せできますから、霊柩車の手配は飛躍的に効率化されるでしょう。
白石 弊社とのシステム連携も、あらためて協議させていただければと思っております。
西井 ぜひ。貴社と連携することで、将来的に葬祭業界から、電話やFAXでのやり取りがなくなればと考えています。
白石 最後に、今後の事業展望などお伺いできますか。
西井 これだけさまざまなサービスを提供しているので、これらを有機的につなげてより効果的なものにしていきたいと考えています。弊社のシステムを導入された葬儀社さんが、その結果として人材不足の解消や事業の拡大を実現するとともに、売上げにならない作業に人を割かずに、「素晴らしいセレモニーをしよう!」とスタッフ全員の背中を押せるようになる。そうした環境をつくるのが、ハース・ジャパンの役割ではないかと思います。今後の展開ですが、弊社は葬儀そのものには手を出さず、その代わり、葬儀社さんが必要とされる部分をより堅固に事業展開していく、というのがビジョンですね。
白石 葬儀以外で葬儀社さんが必要とされる部分を、というスタンスは私たちLDTにとても近いものを感じました。本日はありがとうございました。
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