公開日時:2025/10/30
葬祭業コラム
【業務デジタル化鼎談】北川祐希氏[㈱Relic AI Transformation部 AIリードエンジニア]×白石和也[LDT㈱ 代表取締役CEO]
※この記事は月刊フューネラルビジネス2025年11月号の掲載内容を元に加筆修正した内容になります。
LDT㈱は、顧客管理システム「スマート葬儀」で葬祭業界のDXを推進。現在、新規事業の開発を支援する㈱Relic(東京・恵比寿)と協業し、AIを活用したコールセンター「スマートコール24」を開発している。今回はRelicでプロジェクトを担当する北川祐希氏、エンジニアの熊田寛氏と鼎談。AIコールセンターの仕組みや葬祭・終活業界におけるAI活用の可能性、AIオペレーターの導入メリットなどについて伺った。
白石 まず、貴社の紹介をお願いします。
北川 当社は新規事業開発に特化した会社で、今年で創業10周年になります。新規事業開発やイノベーション創出の共創パートナーとして、ビジネス×テクノロジー×クリエイティブを提供するのが当社のバリューです。それぞれ単体でも力を発揮できる人員・体制ですが、掛け算で力を発揮できることを強みにしています。LDTさんとの出会いは、当社がeラーニングコンテンツを提供した会社様と取引があり、その担当者からの紹介です。その後も白石社長と何度か情報交換をしまして、少し前にLDTさんがリリースされた介護・看護向けスキマバイトマッチングサービス「ケアシフト」や、スキマバイト対応人材マッチングシステムを自社ブランドで簡単構築できる「マッチドライブ」のお話をいただき、協業してシステム開発しました。それが、今回のAIコールセンター「スマートコール24」の開発につながりました。
熊田 私が所属するAI Transformation部は、AI活用の技術的支援だけではなく、ビジネス側の事業プロデュースまで行ないます。「生成AIを使ってみたいが、どのように新規事業を展開すればいいか」といった相談を受け、業務内容をヒアリングしてAI活用が有効なポイントを提案。当社で簡単なプロトタイプを作成し試用してもらい、承諾を得て本格的な開発に進む、という流れになります。
白石 当社がコールセンターについて相談させていただいた背景としては、葬祭・終活業界ではコールセンターが24時間対応であるという前提があります。しかも夜間に働きたい人は少ない。死亡数の増加で葬儀の需要が高まるなか、夜間の電話対応は人手不足で失注が多くなっている。さらに、コールセンター自体も人材の確保がむずかしくなっている時期に来ています。
葬儀社の深夜・早朝の電話対応は、逝去のご連絡、お迎えの依頼、葬儀の相談など特定の領域に限定されていますから、必ずしも人間が対応しなくてもよく、決まりきったやりとりであればAIでもできるのではないかと導入に踏み切りました。AIであれば人的ミスも防げますし、採用・研修のコストや離脱のリスク以上に拡張性が高いということもあります。 では、「スマートコール24」について、概要、仕組みをご説明いただけますか。
熊田 スマートコール24は、AIが人間に代わり24時間365日電話応対をするシステムで、葬儀社の深夜・早朝の電話応対、人手不足といった課題解決を目的にしています。仕組みは、クラウドコンピューティングサービス「Amazon(アマゾン) Web(ウェブ) Services(サービス)(AWS)」などが提供するいくつかのサービスを連携させています。お客様からのお電話は、最初にクラウド型コールセンターが受けます。そこでお客様が話された内容はリアルタイムでテキスト変換され、その意図を生成AIが理解して応答テキストを生成します。そのテキストからAIが人間の会話に近い対話文章を考えます。最後にその文章をAI音声ジェネレーター/音声合成ツールで人間らしい自然な音声に変換してお客様にお伝えする、というものです。
葬儀や終活はデリケートな面もあるので、AIの活用は特に配慮が必要な分野。単なる業務の自動化・効率化ではなく、お客様の心に寄り添ったシステムを目指しています。応答速度を損なわない、かつ自然な会話を実現するために、さまざまな検証を重ねながら追究しています。
白石 貴社が他業界で得た成功体験から、葬儀・終活分野へ転用できるポイントを教えてください。
北川 当社は誰もが新規事業に挑戦できる「イノベーションの民主化」を目指しています。その意味で当社がこれまでに得た成功体験は、どの事業分野でも有効です。
葬儀・終活の分野においては、DXがまだ進んでいない部分、そして慣習や社会通念上、誰も手をつけてこなかった部分が活用のポイントになると思います。「こういうものだ」と思い込んでしまっている部分こそ、これまでの新規事業の開発経験が活かせると考えます。
白石 AIオペレーターの台頭・成長と、これからについてはどのようにお考えですか。また、AIオペレーター導入により解決できる葬祭業界の課題は何でしょうか。
北川 従来の自動応答システムでは、「○○の方は何番のボタンを押してください」といった決められたシナリオに沿った対応しかできませんでした。それが生成AIの台頭により、曖昧な質問でも発言の意図や文脈を理解したうえで柔軟に応対できるようになりました。
AIオペレーターの精度がさらに向上すれば、人間が得意なものは人間が、AIが得意なものはAIが、とそれぞれの得意分野を活かしていくことができると考えています。
熊田 AIオペレーターで解決できる葬祭業界の課題は、3つあると考えています。
1つ目は、身体的・精神的な負担の軽減です。AIオペレーターの導入で、その負担軽減に寄与できると思います。
2つ目は、人手不足の解消と本来の業務である葬祭業務への集中です。昼間の電話でも資料請求や見学予約など、よくある問合せが多いと思います。それをAIに任せることで、事前相談や喪主との打合せといった人間ならではの仕事に時間を割いて丁寧な対応ができます。
3つ目が、教育ツール的な活用です。キャリア豊富な社員の考え方を組み込んだAIが、その考え方をロジカルに展開し、時系列に分岐していく対応の仕方を出力。新入社員はそれを見ながら学ぶことができます。
白石 なるほど、教育ツールは新しい視点ですね。私たち葬祭業界に関わっている者として4つ目を加えるなら、葬儀社の採用競争力が向上することだと思います。深夜・早朝の対応がないだけで採用がしやすくなりますし、AIの導入で人間が付加価値を上げる業務に注力できるようになれば、その業務に特化した人材も採用がしやすくなります。そうなれば、給与も上げられて採用競争力が高まると考えます。
白石 AIの知見を活かした事業例は、どのような業界で進んでいるでしょうか。
熊田 AIはさまざまな業界で活用されています。たとえば、小売りやサービス業界では商品企画開発のサポート、キャッチコピー案やパッケージデザインの原案作成にもAIが使われています。金融・保険業界では膨大な法令・規定などのデータベースと対話型のAIを組み合わせて、調査の時間を大幅に削減しています。建設業界では画像生成AIによる完成イメージの作成。メディアではAI記事執筆支援ツール、AI動画分析など、枚挙にいとまがありません。
白石 当社でも、暮らし・健康・介護・社会参加の課題に対し、AIを活かして貢献したいと考えています。先に話が出たケアシフト、マッチドライブもその一環で、先頃関連する特許を出願したところです。これはLDTの知財運用モデル「AgeTech(エイジテック) パテントアンブレラ™」を強化し、将来的に機能追加などができる余地(拡張性)を確保するための出願でした。特許はすでに45件以上の申請をしており、スマート葬儀・スマート火葬予約関連の特許だけで3件の権利化が完了しています。
スマートコール24は今年10月に実装まで漕ぎ着けました。ほかの業界にも顕在需要があると考えています。
熊田 金融・証券業界では生成AI搭載のAIオペレーターのリリースやクラウド型のAIコールセンターの導入が続いていますし、運輸・物流業界では集荷依頼の電話受付、保険業界では自動車事故の受付をAIオペレーターが行なう事例が出てきていますから、今後の市場ニーズは高いと思います。
白石 まずは介護業界からと考えていて、実証実験を進めてもいいという介護施設も出てきています。本日はありがとうございました。
葬儀オペレーションを、もっと効率化。
葬儀運営を、もっとスマートに。
葬儀管理システム・葬祭管理システムのクラウドサービスなら『スマート葬儀』。見積書作成・請求管理・施行業務・供花受注などを一元管理し、 葬儀オペレーションを効率化します。
シェアNo.1・導入600会館以上・月額1.9万円から。
サービスサイト
open_in_newCopyright 2026 AgeRobotics Co.,Ltd